暫定版です。取り扱い注意                         実験データと写真撮影は少しずつアップします。
20年度足利工業大学附属高等学校研究紀要

   竹炭のマイクを作ろう

                                      足利工業大学電気電子工学科非常勤講師
                                      足利工業大学附属高等学校電気科教諭
                                                   岩ア眞理

はじめに

 私たち人類が進化出来た事の中で一番の理由は情報の伝達が出来るように成ったことです。ヨーロッパ系の
クロマニヨン人達は数万年にわたり石器の発展がまったく見られず同じ石器を使い続けていました。また声帯が
発達しなかったので言葉による情報伝達が出来ないことが滅亡につながっていったと言われています。
 その同じ時代にアフリカで出現した私達の祖先は声帯が発達しており、情報の伝達が出来るようになったため
石器の進化もありました。そして各地に移動し文明を作ってゆきました。ヨーロッパでは次の氷河期により人々は
南に移動したり谷の中の暖かいところにを見つけて移住し、情報の伝達により生き残る知恵を伝えました。クロマ
ニヨン人は生き残る知恵も少なく滅びてゆきました。このことから言葉による情報の伝達は重要であったと考えら
れ、昔のことも遺跡の発掘により情報として蓄えられ各地の研究者により昔のことが解るようになり、情報として
伝達されてます。私たちが使っている音は大気圧を変化させた波です。話をするとき脳から出た信号により肺から
のコントロールされた空気を声帯を変化させることにより音波(空気の圧力の粗密の周期の音声)として放射されま
す。これが音声というものです。私達が聞き取ることの出来る音声の周波数は子供では20〜20000HZと言われて
いますが年を取るにつれて耳の中の音を感じ取る器官に石灰が堆積して高音域が聞き取りにくくなります。50才を
過ぎると音の上限の周波数は一般的に10000HZ以下になっています。また小さい音も聞き取りにくくなります。
またこのごろは生徒は携帯電話の音楽プレーヤーやICデジタル音楽プレーヤーでイアーフォンを付けて大きな音量
で聞いていると殆どの方が若年性難聴になり、小さな音が聞こえにくくなったり周波数特性が落ちてきます。


音圧を電気に変える

音圧の変化を電気に変える機能がマイクロフォンという道具で一般的にマイクと呼んでいます。

マイクにはいろいろな種類があります。一般的に良く使われているもので可動コイル型、コンデンサー型、圧電型、
圧力抵抗型などのマイクがあります。
 可動コイル型は磁石の磁気をコイルが横切るときに電気が生まれます。早く横切ると幅の短い大きな電圧が発生し、
ゆっくり動くと幅の広い小さな電圧が発生します。周波数は20〜20000HZの帯域です。
 コンデンサー型は二つの板と薄い振動版に直流の48vの直流電圧(ファントム電源と呼ぶ)をかけ、音圧により、板の
間隔が変化するがコンデンサー容量の変化となり、アンプ(電圧増幅器)により電圧に変換するものです。
 現在のコンデンサーマイクは電圧を加えなくても良いように、薄い板に静電気を帯電させて高圧の電源が無くても
働くようになっています。コンデンサー容量をICのアンプで電気に変換しています。周波数は20〜50000HZの帯域です。
 圧電式はロッシェル塩などの結晶に圧力を加えると、その両端に電圧が発生するものです。この圧電式のマイクや
スピーカーは小さく軽量であり電源の消費も少ないので携帯電話などに取り入れられています。周波数は100〜150000
HZの帯域です。
 圧力抵抗型は炭などの粒子に圧力を加えると接触抵抗値が小さくなり、圧力を抜くと抵抗値が多くなることを利用し外部から
電源を入れ、音波による抵抗の変化を電圧を加えることにより、その抵抗変化をオームの法則によりトランスで交流
信号のみ取り出すものです。周波数は100〜5000HZ程度の帯域です。
 この炭素粒子を使ったマイクは明治時代より電話機の送話器として使われてきました。炭素マイクの特徴としては
壊れにくいこと、取り扱いがむ簡単なことです。ただし大きさは上の二つのマイクより大きいという欠点もあります。
 電話機は音声(情報)を伝えるための手段として使われています。私たちが普段話をしている周波数帯は大体100Hz
〜6000Hzの間に入っています。また電話での情報のやり取りに必要な最低の周波数は300〜3400Hzの帯域で間に
合うことがわかり、その音声帯域のみ伝送できれば良いので現在も使われています。 しかし電話の音声帯域は上と
下が削られているために通常の会話と電話を通した音はだいぶ変わっていると皆さんも沖好きだと思います。また電
話の送受話器には落としても壊れにくいと性質も合わせて必要です。ただしラジオ放送に使われている帯域では一般
電話回線は使えませんので音声での電話網での周波数はISDNの回線を二つあわせて上は7000Hzになっています。




詳細

 ここでは炭の粒子の圧力の変化を抵抗に変化させ信号を取り出して使うものです。

炭のマイクと電池とトランスを直列に接ぎます。電池の電圧は1.5Vですので炭の
抵抗が0Ωでもトランスの内部抵抗がありますので、あまり電流は流れません。
ただしトランスのインピーダンス(交流抵抗)が600Ωといっても、これは直流の抵抗の値ではありません。
ここではST-71という、インピーダンスが600Ω:600Ωのトランスを購入して使っています。このトランスは秋葉原などの
お店で購入できます。直流抵抗値は55Ω前後です。トランスにはあまり多くの電流を流すと、熱を持って焼けてしまいま
すので全体では10mA程度以下の電流にします。電池の電圧は1.5Vとして計算するとオームの法則により抵抗値は電圧
割る電流ですのでR=V÷I=1.5÷10mA、mAですから、それぞれ1000倍するとR=1500÷10となりR=150Ωの答えになります。
これより150-(マイクの抵抗+トランスの抵抗)で必要な抵抗値が計算できます。

回路について

一次側には電池の電流と炭の抵抗の変化が合わさった電流が流れています。
そして二次側は電流の変化分の交流の信号が発生します。
この信号をアンプで増幅してスピーカーから音を出します。


用意する材料
岩崎式炭焼き窯で作った竹の白炭を用意します。
最初に炭を細かく砕きます。そうしたら穴の大きさが2oのフルイで2o以上の大きさのものを捨てます。
網に通ったものを1oのフルイに通すと残りが1〜2oの大きさにより分けられます。

乾電池(単三型) 電池ケース(単三型) マッチングトランス1  ST-71
マッチングトランス2 TAM12095
プラグジャック(ミニ) 高級電池ケース(単三型) コンパス 円定規
プラグ 配線コード 接着剤 工具一式
電導性の竹炭 フルイ プラスティックケース丸型 黄銅箔(0.1t)



作り方
丸型プラスティックの入れ物のフタに3oの穴を10個ほど穴あけをします。
プラスティックの底にも一箇所電線の通る穴を開けます。
プラスティックのフタの内側の直径を計り、黄銅箔を円形に切り出す。
同じく底の内側の直径に合わせて黄銅箔を切り出します。
炭を砕き、2o穴のフルイで大きさをそろえます。
次に1o穴のフルイでより分けて1〜2oの炭を作ります。
プラスティックの底から配線を通し切り取った黄銅板にハンダ付けを行います。
上の穴にも同じく黄銅板に線を通してからハンダ付けを行います。
底の黄銅板を底に接着剤で固定します。
上の線はまだ固定しません。
竹炭の粉を入れます。多すぎず少な過ぎず。
上のフタを閉めます。
底から出ている線を電池ケースの+電極にハンダでつなぎます。
トランスの一次側から出ている片方の線を電池ケースの−電極にハンダ付けします。
残りの一次側の線をプラスティックのフタ側の線に接続します。
二次側の二本の線を差し込みプラグにつなぎます。
電池ケースに電池を入れる。
出来上がりです。

測定器を用意します。発信機・アンプ・広帯域スピーカー・音圧測定器・オシロスコープなど
基本の周波数を発信機からアンプに入れてスピーカーから音を出します。
出力レベルは騒音計などを利用して一定音圧にしてください。
もともと炭の粒子ですので周波数特性は良くありませんので100Hzあたりから5000Hz程度の間で測定してみてください。




プラグをアンプの入力につなぎます。
音が出れば成功です。


材料の用意 フタへの穴あけ
底の穴あけ 黄銅の切り取り
ハンダ付け 配線1
配線2 配線3
配線4 完成
配線5 オシロスコープの波形


簡単なICによるアンプの製作



写真は2ヶ月ほどかかります。



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