2006年5月23日に木質炭化学会の研究発表した全文です。
この文章は、木質炭化学会に著作権がありますので利用する方は許諾を受けてください。
図及び写真については適宜追加をしていきます。

この発表要旨は現在の高温度窯(IM-7)が出来る以前の研究をまとめたものです。
これは初期型からIM-4型までの形式での研究成果の集大成です。そしてこの研究成果を
2004年6月に北見工大で行われた木質炭化学会研究発表会で発表要旨です。

次の研究成果については(炭焼き窯の煙突本数と内部温度)、(炭焼き窯IM-7の高温度化の研究)、
(炭焼きの排煙の無煙化)を予定しています。
関電研で(炭の抵抗値の変化による接地抵抗の測定)を発表予定です。

新形式炭焼き窯による炭化時間の短縮化
        (足利工業大学附属高等学校) 岩ア 眞理

1.緒言 
 化石燃料の大量消費により,化石燃料に含まれている硫黄が燃焼し硫黄酸化物とな
り,空気中の水分と反応し酸性のミストとなり地表に降り注いでいる。それらは,日本
各地の山野の樹木に付着し,太陽熱や風により濃縮され,次の雨で地上に落ちて酸性
土壌となり,このために梢枯れや立ち枯れがおこっている1)。この対策の1つとして,
炭に含まれるカリウムなどのアルカリ成分を利用して酸性化した土壌を中和するこ
とが考えられる2)。日本の木材は,外国製の安い木材の輸入が増えたために価格が暴
落し,人件費の高騰と林業従事者の高齢化により,手入れが行き届かず,また,後継者
の減少で山野が荒れている。特に,竹材は安価な合成樹脂製品が出回り,農業分野や住
宅建材などの活用が減り,使われなくなった。竹の活用として,環境保護的な観点から
すると,竹材は炭にして山野に帰することが一番妥当であると考えられる。しかし,従
来のドラム缶窯による炭化時間は約10時間を要した3〜5)。炭化時間の短縮を目的とし
て本研究で開発した間接窯は,竹材で3時間,木材で5時間以下で炭化することができ
た。その結果,1日での炭焼きが可能となり,教育施設や研究施設での環境教育や総合
学習への利用が可能となるとともに,炭化温度の正確な管理が可能となり,研究活動
への即応が可能となった。
 
2.原型のドラム缶窯の構造
 原型のドラム缶窯は図1に示すようなもので,使用に際しては地面に穴を掘り,窯を
直接埋め使用した。新型窯は炭化炉の内部温度を800℃以上にするために,図2に示す
ように燃焼部は,ドラム缶の1/2の長さのものを燃焼部として原型のドラム缶に溶接
し,炭化部は炭材の出し入れを容易にするために出し入れ口を2ヶ所に増やし幅も広
くした。ロフト材は材料の収縮と高温の空気の通りと耐熱性を考慮し,鉄棒から幅
60mm,厚さ3oの鉄板にした。

3.新型窯による炭化温度の上昇と炭化時間の短縮のための改良
 原型ドラム缶窯による炭化時の最も熱が逃げる場所は地面であると思われるので,
ここの断熱を考えた。断熱材は,ビルや家屋の壁材として使われる軽量発泡コンクリ
ート板(ALC,35mm厚さ)を窯の下部に敷き入れた。次に,周囲を軽量発泡コンクリート
で枠をつくり,その間に乾いた土を入れた。ドラム缶上部にも10pほど土を掛けた。
一般に炭化終了は煙の色6)で判断したが,この窯の炭化終了は総合学習において児童
でも判断できるように,煙の色が無色になった時を炭化終了とした。

4.内部温度の分布実験と竹炭の分析結果および走査電子顕微鏡写真
 図3に示すように,新型窯による竹の炭化温度は,180分間(3時間)以内で前部,中央,
後部ともに800℃に達している。図4のナラ材では300分間(5時間)以内で全体が
800℃以上になっている。竹炭とナラ炭を日本工業規格分析法(JISM8812(1963))によ
って行った結果は表1,2に示す。竹炭の物理的性質は容積重:0.48,平均抵抗値:2.6
Ω/cmであり,ナラ炭は容積重:0.42,平均抵抗値:211Ω/cmを示した。竹炭とナラ炭
の横切断面と縦割の側面および竹炭の表面と内皮の走査電子顕微鏡(日本電子製JXA
-8600MS)写真を写真1から写真6に示す。


     図1 原型窯の構造(単位o)                図2 新型窯の構造(単位o)
         



 図 3 竹材の炭化温度特性(2005/10/16足利工業大学総合センター)

 図4 ナラ材の炭化温度特性 2005/10/30 勢多郡東村わらべ工房窯(市町村合併により、みどり市東町に変わりました)

1 竹炭の分析結果              2 ナラ炭の分析結果

分析結果は削除しました。
分析結果が必要な方はメールで申し込みください。
又はpdf文書をダウンロードしてご使用ください。
著作権に関しては木質炭化学会にあります。

5. 結言
 窯の温度特性の図1から竹材で170分,図2のナラ材は270分で無煙となり炭化が
終了した。竹材の炭化時間が従来の炭焼きの10時間より大幅な短縮ができ,乾燥した
竹材では3時間以内,乾燥した木材でも5時間以内で炭焼きが出来た。これは現用の
方式では不可能であった炭化時間の短縮に対して,本方式がすぐれた方式であること
を確認した。
 
謝辞
実験にご協力を頂いた大森禎子博士および本文のご指導を頂きました谷田貝光克博
士と走査電顕微鏡写真を提供された足利工業大学電気電子工学科荘司和男教授に感
謝いたします。

参考文献
1) Omori T.,Yoshiike Y.,Okamura S.,Sugiura M.,Hashimoto S.,and Iwasaki M.(2004)
The 6 International Symposium on Plant-Soil Interractions at Low pH.S10-6,p.18.
2) 大森禎子,岩崎眞理,吉池雄蔵,岡村 忍,(2005),地球惑星科学関連学会2005年合
同大会,地球温暖化防止のためのCO2固定とカーボンサイクル部門
(CDROM).L093-001
3) 岸本定吉,杉浦銀冶,鶴見武道(2001),エコロジー炭焼き指南,創林社,p.12-42.
4) 岸本定吉(1998),炭,創林舎.
5) D.W.KELLY(1986),CHARCOAL AND CHARCOAL BURNIBG Shire Album.
6) 谷田貝光克(2002),よい煙悪い煙を科学する,樺継出版,p.33-41.

この発表要旨より正式な論文を学会に送りましたので、次回の木質炭化学会誌を購読を
お願いいたします。


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