暫定版  出来上がり度90パーセント                                            足利工業大学附属高等科学校研究紀要

                                      最終修正 2016/11/18

プロの料理に挑戦しよう第4回

炭焼きで焼いた竹炭でバウムクーヘン作りに挑戦しよう

                           足利工業大学総合研究センター 客員研究員
                           附属高等学校 電気科科長 2016年3月定年退職
                           東京大学農学部研究員    2016年4月より
                                               岩﨑 眞理

はじめに

 このシリーズは炭焼き教室のお昼の食事として、料理の歴史や作り方を学びながら、
調理の基本の習得や食事を作るときの楽しさと火の使い方の安全教育などを楽しく体得
するものです。そのために文章は小学生でも理解できるようにやさしく書かれています。
味に関してはプロの調理師の方のアドバイスにより確認をしています。作業するに当たり
環境への配慮も考えて見て下さい。


1.バウムクーヘンの歴史

  バウムクーヘンはドイツ語でバウムは木でクーヘンはケーキですから木のケーキとな
 ります。バームクーヘンは木にケーキの素を木に巻きつけて焚き火等であぶって綺麗な
 焦げ目を付けます。そして、幾重にも重ね合わせることにより丸い木の柱の、お菓子とし
 て作ったものです。このケーキを輪切りにすると木の年輪の紋様が現れます。このバウ
 ムクーヘンの基となったのは人気の高いマルツィーパン(Marzipan)でよくマジパンと呼ば
 れています。この生地を棒に巻きつけて焼いたのがバウムクーヘンの元とになっていま
 す。元々人類は材料を棒に刺し、火にかざして焼いていたのを応用しました。その後、紀
 元前100年頃のギリシャでは棒にパンの生地を撒いて焚火で焼いていました。これがバ
 ウムクーヘンの基となりました。1500年も過ぎた14~15世紀になると、ヨーロッパではお
 菓子の技術が入ってきました。これは小麦粉にバターなどの動物の乳から採った油脂、
 甘みの蜂蜜、そして卵を入れて焼くことになったのです。これで大分現代の味に近づき
 ました。また17~18世紀のドイツでは当時貴重であった砂糖が取り入れられました。この
 砂糖きびはもともと南太平洋の島に生えていた植物でしたが、時代とともにインドに伝わ
 りました。そして砂糖に関する記述ではアレクサンダー大王が東方遠征でインドに行った
 時に砂糖キビの記述があったと伝えられています。実際に砂糖きびが地中海沿岸に導
 入されたのは十字軍の遠征によってインドから持ち帰り広まりました。ドイツなどの地域
 では寒さのため,熱帯地方の砂糖きびは育ちませんが砂糖大根から精製された砂糖が
 あります。この砂糖大根(ビート)からの砂糖の抽出法はドイツの科学者により1747年頃
 に発見され実用化されました。その後、機械製造技術の進歩により卵白のメレンゲ(泡だ
 て器)の道具が作り出されたこと、そしてバウムクーヘンを焼くための機械の発明されて、
 その料理道具の発展もありました。この時代の菓子職人の親方(マイスター)たちの、たゆ
 まぬ努力により現在食べられているバウムクーヘンが出来上がりました。ドイツのマイス
 ター制度は見習い(ゲゼレ)を3年間行い、この中で週2回の専門学校での技術と学科の
 勉強を行いながら工場では親方のマイスターから全部門の手ほどきを受け、ゲゼレの試
 験に合格すると職人の資格がでます。その後5年間マイスターの指導の下で腕を磨き、
 マイスターの学校への入学資格を得る。マイスターの学校を卒業試験に合格すると初めて
 独立して店を経営できるようになります。これは日本では考えられないような厳しさです。
 しかしこの厳しさにより品質や技術が現在まで受け継がれているのです。


2.安全対策とバウムクーヘンを焼くための窯を作ります。

2.1 安全対策と使う工具について
 安全に怪我をしないように注意してください。作業着の着用、靴も運動靴など安全なもの
頭の保護を目的として最低でも、作業帽子が必要です。出来れば安全ヘルメットの着用も
してください。手袋は手の保護で通常の仕事でも軍手は最低必要です。そして火を使うと
ころでは皮の手袋が必要です。物が飛んだり火が跳ねて目にぶつかるときもありますので
安全めがねや保護眼鏡が必要です。ダイソーの保護眼鏡が透明度高く推奨します。
そして、ほこりも多いために仕事用のマスクもして下さい。作業着も化繊のものは火がつき
やすいので綿の生地の作業着を選んでください。物が足に落ちたときに足を保護する作
業靴も必要と考えます。また火の回りには1つ以上バケツに水を入れてから仕事をして下さい。

2.2 窯作りの作業道具の確認
 電気ドリル 10㎜φドリル刃 ペンチ プライヤー スケール 金槌 ドライバー
 金切りはさみ ポンチ 必要に応じて工具を用意すること。
 そして作業手順を良く覚えてから仕事に取り掛かること 2.3 作業手順
 洗剤・てんぷら油・醤油などの18ℓ(一斗缶)のスチール缶を用意します。(写真1)
 一斗缶は奇麗に洗っておきます。
2.3. 2 缶の上面の三面の隅をナイフや鉄切はさみや缶きりで開けます。(写真2)
2.3. 3 底面は6~10φの穴をドリル等で均等に25個あけます。空気穴となります。(写真3)
2.3. 4 上向きにしたら蓋が前後になるようにします。缶の両横の真ん中に上から6cmの切れ
  目を入れる。(写真4)
2.3. 5 切れ目の下から45度ずつに外側に開く。これで90度に開きます。(写真5)
2.3. 6 缶の内側と外側には塗料などにより表面に塗料がかかっていますので、焚き火などをして、
  缶を焚き火に入れて、コーティングを焼いてしまいます。
2.3. 7 缶の縁を金槌でたたいて角で手が切れないようにします。蓋の横のバリはヤスリで角を取って
  おきます。(写真6)

2.3. 8 重量ブロックを4個用意します。
2.3. 9 直径3cm長さ30cmほどの棒と料理用のアルミ箔を用意します。
2.3.10 2.3.9の棒にアルミ箔を巻きつけます。木を回す方向に巻きつけること。


3.バウムクーヘンの材料の用意

 3.1 ケーキの材料
 卵5個、薄力粉115g、コーンスターチ15g(馬鈴薯澱粉や片栗粉やくず粉でも可)、
 粉末グラニュー糖
30g、上白糖70g、有塩バター60g、バニラエッセンス、レモン
 エッセンス、アーモンド粉末(パウダー)
20g(こくを出す為)
 無塩バターの場合は塩を少し用意します。

 3.2 料理道具の用意

ステンレスボール3個(直径20~30㎝)以上、木のしゃもじ又はヘラ、泡立て2個、お玉1個、
キッチンはかり、
粉ふるい、あれば卵黄の分離器、鍋、ゴミ箱、キッチンペーパー、ティシュペーパー
ごみ袋、ケーキ用包丁、まな板、お皿、こんろ、炭はさみ、焚き火の材、着火バーナー等


4.バウムクーヘンの作り方(レシピ)
  4.1 ステンレスボールを二つ用意して、5個の卵を割り、卵黄と卵白に分けます。(写真9)
   卵の殻は炭焼き窯で焼いてから粉末にして、炭と一緒に山野に撒いてください。
   卵の殻はカルシュウムが主成分ですので酸性の水を中和します。
  4.2 粉末グラニュー糖を少しの水を入れて火にかけて溶かします。
   溶けたグラニュー糖の温度が下がったら4.1の卵白にいれてます。
 4.3 卵白を泡だて器を使い丁寧に時間をかけて泡立てします。(メレンゲ作り)
   角が立つように硬くなるまで、力を入れて丁寧に泡立ててください。(写真10)

 4.4 残りのステンレスボールにバターを入れて低温で溶かしてください。
   高温にはしないてこと。
  4.5 4.1の卵黄に白砂糖を加えてクリーム状にしておきます。
   滑らかさを出すためです。
 4.6 4.4バニラエッセンスとレモンエッセンスを香り付けに入れて良く混ぜます。
   隠し味程度に入れます。

 4.7 4.6に薄力粉とコーンスターチを粉ふるいで細かくしながら入れます。(写真11)
    粉ふるいが無いときはお茶用の茶漉しものでも可

   だまをつくらないように。
 4.8 4.3に4.5と4.6を入れてざっくりと切る様にヘラで混ぜ合わせます。卵白の泡を潰さないように
   、最後にアーモンド粉末を混ぜます。アーモンドはこくを出すためです。
   これでバームクーヘンの素が出来上がりましたので次の項目に進んでください。

 4.9 使ったボールは綺麗に油を紙で拭いてから洗います。最初から洗剤で洗わないこと
   洗剤の使いすぎは環境への影響が大きい。


5.バウムクーヘンの焼き方

 5.1 竹白炭を缶の容量の3割程度ほど用意して焚き火等で竹炭に火を着けます。
 5.2 火の着いた火傷をしないように手際よく竹炭を缶の中に均一に入れます。(写真12)
    バーナーがあるときはそのまま炭を入れて火をつける。
 5.3 アルミ箔を撒いた棒を缶のガイドに合わせて一度高温にして棒を焼きます。
   これはケーキの素が棒に良く付かせるためです。

 5.4 棒を4.8のボールの上に置いて、お玉で棒全体に均一に塗りつけます。付けたら缶
   に入れて良く回丁寧に回しながら下に落ちないようにしながら軽めに焼いていきます。
   最初は表面に焦げ目が付かないようにして、すぐにおろしてもう一度表面にケーキの素
   を塗りつけます。
(写真13)
 5.5 棒を缶に乗せたら丁寧回して軽く焼けたら、回転を遅くして表面を丁寧に狐色になるま
   で焼きます。
(写真14)
 5.6 5.5をケーキの材料の上で均一に塗り軽く焼きます。
 5.7 もう一度塗り直して、こんがりと色目が付くまで焼きます。
 5.8 ケーキの素がなくなるまで続けます。
   繰り返しの手順です。
 5.9 出来上がったらまな板の上にクッキングシートを敷いて出来たバウムクーヘンを置いて
   上を軽く押さえながら棒を抜きます。
(写真15)
 5.10 抜けたら中心のアルミ箔をねじりながら抜き取ります。(写真16)
 5.11 包丁で均等に切り分けてお皿にペーパーを敷いてから盛り付けます。(写真17)
    ケーキからの湿気を防ぐためです。
 5.12 料理道具は洗ってきれいにします。


 6.片付け

 缶から残りの炭を焚き火に移します。熱いので取り扱いには注意すること。
 ブロックの片づけをします。
 お茶等を用意しておいしく食べましょう。
 帰るときは来た時より奇麗に心がけましょう。


  7.写真データ
   

写真1 缶のようい 写真2-1 缶の縁開け 写真2-2 缶を開けたところ
写真3-1 そこの穴あけ位置 写真3-2 穴を開けたところ 写真4-1 缶の切り込み位置 
写真4-2 切込みと道具 写真5 曲げ、縁を叩いて奇麗に 写真6 周りをやすりがけ
写真7.表面処理材の焼却 写真8.窯の出来上がり 写真9.バウムクーヘン窯の設置1
写真10.バウムクーヘン窯の設置2 写真11.料理道具 写真12.棒は50㎝くらいで3㎝以上
写真13.芯棒にアルミ箔を巻く 写真14.材料の用意 写真15.卵を卵白と卵黄に分ける
写真16.バターを低温で溶かす 写真17.卵黄にバターを入れ攪拌 写真18.砂糖を加える
写真19.粉とスターチをフルイにかける 写真20.卵白に粉砂糖を加える 写真21.メレンゲは硬くなるまで泡立てる
写真22.メレンゲ、バター、粉 写真23.メレンゲにバターと粉を加える 写真24.バニラエッセンスを加える
写真25.アーモンドパウダーを加える 写真26.窯に炭を入れる 写真27.火を着ける
写真28.火は奥側が高くなるように 写真29.心棒を軽く焼く 写真30.バウムクーヘンの基を塗る
写真31.軽く焼いたらもう一度基を塗る 写真32.表面が固くなったら本焼き 写真33.31と32の繰り返しで焼き上がり
写真34.台の上に取り出す 写真35.心棒を板に打ちつけて抜く 写真36.アルミ箔を抜き出す
写真37.内部にアルミ箔が見えます 写真38.アルミ箔を捻りながら引き抜く 写真39.アルミ箔を取り出した様子
写真40.端を切る 写真41.同じ大きさに切る 写真42.綺麗に並べる


出来上がったならば、表面にチョコレートを塗ると見栄えもよくなります。
もし、もっとシットリ感がほしい場合には砂糖を減らして、メープルシロップや蜂蜜を加えると良い。
この基本のバウムクーヘンの基とメープルシロップ入りのバウムクーヘンの基を交互に塗って焼いても
面白い感覚の味になる。各自で自分の好みに合うように調整してください。このレシピは炭焼きでの
デザートととして平均的な味付けをしたものである。


付録
 足利市福居町にはバウムクーヘン専門の店がありました。昭和58年にお菓子のコンクールで日本一
に輝いた倉田家という店がありました。現在はお年を召した為に廃業しています。
 この近くでも足利市では香雲堂の古印最中、船定の芋ようかんがあります。東京の方は舟和の
方が有名ですかが元々は舟和さんは舟定より出ています。でも味を比較すると足利と東京の味の違い
があります。
 太田市では山田屋さんの焼き饅頭がお土産には定番の一つです。この焼き饅頭は群馬県のお土産品
の代表とするものです。この饅頭は酒饅頭を蒸して作り、炭火で焼いて味噌ダレをつけて食べる郷土料理
です。
 また桐生市では高野商店の忠治漬けが有名です。これは山葵(わさび)漬けに大根やきゅうりの塩漬けを
入れたものです。またケーキ屋さんとしてはミヤケがあり、かぼちゃのケーキが有名です。天皇が桐生に行幸
されたときに出されたものです。 

謝辞
このバームクーヘンは足利市八幡町のレストラン「ランプ」のマスターからの助言と協力により
書くことが出来ました。ここでお礼の言葉とさせていただきます。
ここも廃業しています。

一言目
私も調理師免許を昔に取得し、得意な分野はうどんと蕎麦とピッツァとコーヒーの焙煎です。
コーヒーは1976年より行い、コーヒー生豆は常に50kg前後所有しています。
ただあまり濃いコーヒーは好きでは有りません。好きなコーヒーはホンジュラスの浅煎りです。
中性的な味です。一番古い1976年のコーヒー生豆は枯れすぎています。先日焙煎して飲んで
見ましたが味も枯れた味となっていました。
通常は3年から5年間置いて乾燥させてから焙煎しています。アイスコーヒーでの焙煎は
約1年間の乾燥後です。買いたての生の豆は絶対に使わない。まずい物は飲まないこと。
深く炒りすぎた苦くてまずいコーヒーを出している味のわからないコーヒー屋さんもあり、味のわから
ない客が美味しいといって飲んでるのも不思議な気がします。
アメリカンコーヒーを注文したら普通のコーヒーを薄めて出してくる理解の出来ないコーヒー屋もいます。
アメリカンコーヒーは浅煎りしたコーヒー豆を通常のように定量使い出すものです。

二言目
このシリーズは炭焼きのお昼の料理として書いていますが、いつもどこかでいいかげんな料理を
見ていると子供達には本当の作り方や本物の味を伝えたいからです。
ですから今回のシリーズは本物の味の追求により水は加えてていません。
水道水はガラスの器にいれ、そして竹白炭でカルキ抜きをしてから、沸騰させて完全に塩素を抜
いから使うか、美味しい水を山へ汲みに行って使ってください。
外国製の水はカルシュウムが多すぎてまずい物がありますので注意をして下さい。

三言目
炭焼きは正式には炭やきなのですが近年は炭焼きが多いので使っています。
木を焼いても炭になりません。ただ焦げるだけです。
木に酸素の少ない高温の空気を送り、熱により分解や化合などを行って炭化させるのです。

最後に
一番いい加減なのは炭焼き料理という言葉です。
何の木を炭にして料理を出すのでしょう。まったく理解できません。
炭焼き料理は炭火焼き料理というのが正しいのです。

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