この文章も現在修正中です、あと少しで完成すると思いますので、印刷等は少し待ったほうがよいと思います。
                                      2002/04/20

                     足利工業大学附属高等学校研究紀要第9号

竹の白炭を使って高周波ダイオードを作りAMのラジオを鳴らしてみよう

          岩崎 眞理
      登田 克司
              Masato IWASAKI          Katsuji TODA


 あらまし 本論文は家庭で一般に料理などの燃料として燃やされている木炭(白炭、炭素)を利用した
簡単な電気の実験論文です。従って、年齢や学力を問わず誰もが楽しめる内容になっており,
且つラジオの高度な部品(高周波検波器)を簡易に製作実験できる丁寧な説明が写真付でなさ
れています。

ところで、その内容の中に含まれている事実は、実は重要な意味を持つ可能性があるもので
あります。炭素は電池や抵抗器など現在も電気材料として活用されていますが、最近はナノテ
クノロジーという研究の新分野が急速に進歩していることを知る人も多いか思われます。ナノ
テクノロジーの特性、特注の重要性から、特に半導体部品の一部として世界の産業に育つ可能
性がありますので,世界中の先進国の各研究機関が、しのぎを削って研究しているのが現状です。
しかしながら筆者2名は電気の教職に携わるものではありますが、電気物性論が本来の専門
ではなく、他の分野が専門でありますので、筆者等の知識不足により大きな誤りをしないよう
に安全を期して足利工業大学の電気物性関係の専門家二人に、ご指導を仰ぎ研究を進めました。
また本研究に関係する著名な研究者の業績などは一般に意外と知られていないようなので、辞典
より[1]引用させていただきました。我々が行った研究の、ほのかな香りと実験の意味と意義が正
確に伝われば幸いです。


1.まえがき

 このラジオを作ったのは2002年夏休み前に本校の登田教諭(以下、敬称略)と話をしているう
ちに竹炭で鉱石ラジオが出来るのではないかという結論になり、足利工業大学電気電子工学科の伊東
先生と荘司先生らに確認を取ったところ、物質が二つ有るのでフェルミ順位(※1)の差が出来るだろうという
 ことで、私の方は炭焼き窯の設計や製作と炭焼き講習会の講師依頼が多く大変なので、夏休
 みの宿題として登田先生に頼み実験をして試作品を作ってもらいました。
 登田先生は大変な仕事が入ってしまったとの感想を持たれたようでした。
  その夏休み中の試作、製作中に登田先生は、夏休みを利用して学校や家庭での試作と実験
 を繰り返しながら竹炭のダイオードを完成させました。
  このときの感想をこめて、この竹の白炭のダイオードを勝手にIT(岩崎竹炭の頭文字)方式ダイ
 オード(写真1)と名づけました。
  9月に入り新学期になったときに登田先生より試作の出来上がったラジオを渡されました。
 これが下記の写真2のラジオです。
  私はこれを小さくして、持っていけるように炭を挿む部分と針の部分をガラス管用のフューズボックスを
 使って改良をほどこしました。
 それから改良実験を行いながら数個のラジオを完成させました。
  日本炭焼きの会副会長の杉浦銀冶先生に、この話をされたら、その昔会長の岸本定吉博士と一緒
 に半導体の研究をしたのですが炭のダイオードは成功しなかったと言っていました。
 2003年の春には杉浦先生にもこのラジオが渡り、日本全国で炭焼き講習会を行うときに見られます。
 現在は、この竹炭ダイオードのラジオを見たい方は、現在私には持ちあわせがありませんので、この竹
 炭のダイオードのラジオを見たい方は東京にお住まいの岸本定吉先生の自宅に行って見せてもらうか、
 またゆったりと森林浴をしながら月見の露天風呂に入り都会の垢を落として体を清めるために国民宿舎
 サンレイク草木に泊まりながら炭の展示コーナーに竹炭のラジオと岸本先生の直筆の色紙が飾ってあり
 ますので、見てください。
  のた直接見たい方は金子支配人に申し込んでから、ラジオを手にとり見ててください。
 ただし電池は入っていますが山の中て、電波のくる方に高い山が在り、その為に電波は届きにくいのが
 難点です。

岸本 定吉博士の自筆の色紙のコピー

 IT(岩崎竹炭)方式ダイオードの原理
 鉱石ラジオの原理の基礎である点接触ダイオードはブラウン管の発明者であるブラウン,K,F
 (ドイツの物理学者 1850年〜1918年)
 マールブルグおよびベルリンの大学で学び、1872年に振動論で学位を取得、ドイツ各地の大学で
 仕事をしたが1895年以降はシュトラスブルグ大学の物理学教授等を勤めたのちに、アメリカに
 渡たり、第一次世界大戦のためにアメリカにとどまりニューヨークで病没した。
  1874年にライプチヒ大学に移り24歳のときにある種の鉱石(半導体)の整流作用を発見した、
 これは”点接触による”非対称電気伝導”として発表されました。
 このことにより20世紀初頭に鉱石検波器に応用された。
 1897年には陰極線オシロスコープ(ブラウン管)を発明され、電気・電子・通信・画像などの分
 野の実験と技術に多大に貢献され、高周波回路・アンテナ・電気計測・無線通信に寄与した。
 これらの業績によりブラウンはマルコーニとともに1909年にノーベル物理学賞が与えられまし
 た 文献[1]、[2],[3]。

 ショックレー Shockley,William,Bradford(アメリカの理論物理学者1910年〜1989)
 BrattainとBardeenによって1947年に点接触トランジスターが生み出された。
 特筆すべきは1956年「半導体の研究とトランジスター効果発見」の功績により上記の2人と共に
 ノーベル賞を受賞した 文献[1]。

 ブラッタン Brattain,Walter,houser(アメリカの実験物理学者1902〜1987)
 1947年にn-Ge片に2本の針を立てた点接触トランジスターの組み立てに成功した。
 Shockleyはそれを待たず接合型トランジスターへの突進を命じ、最大の成功を収めるのに
 至った。これら一連の「半導体の研究とトランジスター効果発見」によりBardeen、Shockley
 と共にノーベル賞を受けた 文献[1]。

 バーディーン Bardeen,John(アメリカの理論物理学者 1908〜)
 1945年終戦によりベル電話研究所に入りShockleyを長とする半導体研究グループに配置された。
 Shockleyの提唱した半導体薄幕電界効果増幅素子に失敗に対し半導体表面の未知欠陥に疑問を
 抱き、表面順位のモデルを規定、Brattainと共にその検証に全力を集中した結果、1947年点接触ト
 ランジスターが出来上がった 文献[1]。
 この成果が1956年のノーベル物理学賞の対象となった。
 1951年イリノイ大学に移り、10年間ほど棚上げをしていた超伝導の研究に本格的に復帰する。
 CooperとSchriefferの2人を協力者としてこの研究を行い、第2のノーベル賞の対象となるBCS理論は
 1957年に超伝導理論を発表し、半世紀に及ぶ最大の謎を解いたものとして大きな反響を引き起こした。
 1972年に協力者の2人と共に2度目のノーベル賞を受賞した 文献[1]。

 これ等の技術が現在のトランジスター工業として開花したのである。

 ※1 フェルミ準位
 フェルミ統計に伴う同種粒子の系で粒子間相互作用を無視した場合、一粒子エネルギー準位
 への粒子の分布を規定するパラメーター
 簡単にいいますと、絶対零度のとき電子が入っている軌道のうち、一番外側の電子軌道の
 エネルギー準位をフェルミ準位といいます 文献 [5]。

 最初にトランジスターの基礎を作ったのはショックレーでしたが、同時期に、なんと日本人の
 科学者でも同様なことが発見されていました。

 ただし昔の鉱石検波器は性能が悪く、雑音も多く、黄銅鉱・黄鉄鉱・方鉛鉱や磁鉄鉱などは、
 やや不安定のため一時期のみ使用され、その後は接合型に押され、見捨てられてきましたが
 レーダーなどの高周波伝送の発達に伴い、点接触ダイオードは、高周波領域特性が優れてい
 るために特に見直されてきました。
 特に接合部の容量は0.5ピコファラッド程度と言うきわめて小さいので
 超高周波領域まで使えるという利点がありますので宇宙通信の周波数には最適です。

 ダイオードの特性は金属と半導体の接触により、それぞれの物質にはフェルミ順位があり
 そのフェルミ順位の差が出来ると、その結果、抵抗性や整流性が生じることによる。
 異種の鉱物により特に白炭は電気が通り、かつ不純物により半導体としての役割をします。
 これは窒素等が炭素に入り込み、何らからの形で関与していることが考えられ、拡散して半
 導体が出来それがN型半導体としての性質を持つのではないかと推測されます。
 周期律表の中で炭素は半導体としては最も軽量なものであり、1torrの場合は昇華温度は
 3586度と言うことで760torrの場合は4827度で熱にも強い性質を持っています。

 鉱石ラジオを作るのには一番簡単なのは市販している鉱石ラジオを購入して鉱石の部分を
 竹の白炭に変えれば誰でも実験が出来ます。
 簡単には学研の大人の科学のシリーズの鉱石ラジオ(定価5500円)が一番簡単です。
 鉱石の部分を竹の白炭に変えるだけで実験が出来ます。
 力のある方は市販のラジオ、AM専用でダイオードがついているものが使えます。
 ただし、このごろのラジオはアイシー化してしまいダイオードが、ついていないものも多いので
 注意を要します。アイワのものは残念ながらだめでした。
 
 ラジオの仕組み
 AMラジオの周波数は531kHzから1602kHzの中波帯の電波を利用しています。
 この電波は昔、それぞれの国で勝手に周波数の割り振りをしていましたが、局の重なりで、ビートが
 起こってしまい聞きたい局が聞けなくなってきましたので現在ではITUが世界中の放送局を取りまとめ
 現在は9kHzおきに放送局が入る事になりました。
 実際に受信周波数を9で割り算すれば割り切れるので解ると思います。
 電波を受けて、電圧に変換するのにはアンテナを使います。
 アンテナは周波数に応じた長さにしますと、共振を起こし、アンテナのセンター部に高周波の
 電圧が発生します。
 電波が1秒間に進む距離÷周波数でアンテナの長さが計算されます。実際はこの半分以下で使います。
 ラジオの中にはフェライト棒に電線を撒きつけてアンテナを小さくしたものが入っています。
 アンテナから発生した高周波電圧は低いために電圧を上げる必要があり、そのための回路を高周
 波増幅回路と言います。
 次に沢山受信した中から放送局の高周波信号の中から聞きたい局を選ぶわけです。
 希望の局を選ぶには希望の局の周波数よりより455kHz高いか、または低い周波数を発振をさせ
 ます。
  発振回路にはLC共振(コンデンサーの可変)回路により発振をさせ、その信号を足したり引い
 たりする混合回路に導きます。 この回路をスーパーヘテロダイン方式と呼びます。
 そして混合された回路にはAMでは455kHzと言う周波数になりそれを中間周波数となります。
 そして増幅する回路を中間周波数増幅回路(IF)と言い、この回路に通し電圧を上げます。
 高級なラジオには選択度を上げるために中間周波数増幅回路が2個以上入っているものもあります。
 また回路には入力電圧(電波の強弱)が変動しても一定の出力をさせるAGC回路もあります。
 そして出て来た高周波信号を整流(検波)しコンデンサーを通すことにより、音声の周波数が取り
 出されます。
 これを電力増幅回路で増幅し、スピーカーで聞いたり、またはイヤフォン等で聞きます。

 回路構成はつぎの用になります。

 531k-1603kHz   f1 RA    f1-f2 mix 455kHz  IF     Det     Power
   アンテナ→高周波増幅回路→混合回路→中間周波数増幅→検波回路→電力増幅回路→スピーカー
                        ↑                                 イヤーフォン
                     同調発信回路
                      f2   Osc
 鉱石ラジオの作り方(下記のラジオの製作)
1.AMラジオを用意して、内部を開けてビスを外してから基盤を取り外し、線を通す穴を2箇所開けます。
  次に半田こてで、ダイオードを基盤から取りはずし、はずしたところに線を2本半田つけし、その線を
  外部に引き出します。
  外部にスイッチをつけて、竹炭のダイオードと一般のダイオードの切り替えスイッチを付けて出来上がり。
2.ダイオードは2つの物質を接触させることにより、2つの物質のフェルミ順位が違うために
  ダイオードの性質が生まれる。
3.ダイオードは竹の白炭と縫い針を上手く接触させると出来ます。
  なかなか難しい、上手い方は1分ほどで聞くことが出来ます。
(写真1)

写真1はダイオード部分です、今回は本校の登田先生にお願いして、夏休みを利用して作っていただきました。
(写真2)

写真2は全体の様子、持ち歩きは不可

竹炭のダイオードを使ったラジオの製作(製作編)
注意事項   ラジオの改造するにあたり音が出ないことや部品が壊れても当方は関知しません。
         また改造した場合はメーカーに修理を出すことは出来ません。
         技術力の無い方は手を出さないこと、必ず出来る人に頼んでください。
部品の確認(税別の値段) 工具は適宜使用
  (写真3)フューズホルダー 1個 (秋葉原で30円)    (写真4)長さ30ミリで3φのビス・ナット(10円)

  (写真5)つまみ(40円から1000円)              (写真6)縫い針(100円)

  (写真7)切り替えスイッチ(100円程度)           (写真8)新しいダイオード(40円)


  (写真9)イヤホーン(100円から180円)          (写真10)電線(各種50円) 


  (写真11)改造するラジオ (100円)            (写真12) 内部の様子

ラジオの改造手順
 1.内部の基盤を止めているビスを抜く。
 2.基盤から検波ダイオードをハンダごてで丁寧に抜く。
 3.長さ10センチほどの電線2本を用意して先端を3ミリほど被服を剥きハンダを盛っておく。
 4.抜いた検波ダイオードの穴2個に電線をハンダ付けする(下記のとおり)。

  (写真13)検波ダイオードがあったところから電線を2本引き出す。


 5.1.5〜2ミリのドリルで引き出し線の穴を開ける(写真を参照)
 6.基盤を元に戻し、ビスで留める。
 7.線を穴に通し外に引き出す。手順は前後しても良い。

 (写真14) 穴あけ2箇所                (写真15) 線を引き出す

ダイオード調整部品を作る(写真を参考)
 1.フューズホルダーを用意し、ホルダー面の下側の出ている金属を切断し、鑢をかけて平らにする。
 2.フューズホルダーにナットをハンダで溶着する。
 3.ナットにビスを回し入れる。
 4.スイッチ下部をフューズホルダーにハンダ付けする。
 5.ダイオードを適当な長さに切断し、出ている線に保護管を付ける。

 (写真16) 左加工済 右加工前のホルダー       (写真17) ナットとスイッチをハンダ付、ビスを入れる

 6.ダイオードをスイッチの上部とフューズホルダーにハンダ付けする。
 7.ダイオードのあまり線をS字に曲げて、ビスの頭にハンダ付けする(バネの役目)。
 8.縫い針を適当な長さに切断しS字線の先端にハンダ付けする。

 (写真18)ビスにS字線を半田付け            (写真19)針とスイッチとダイオードを半田付け

  9.スイッチの上側をホルダーに下側をダイオードに半田付けをする。
 10.1000度以上で焼いた竹炭をフューズホルダーの大きさにカットして入れる。(抵抗値は30オーム以下)
 11.確認をする、出来上がり。

ラジオに調整器(ダイオード)を取り付ける。
 1.2液混合エポキシ樹脂接着剤を用意する。(5分硬化)
 2.ラジオに調整器を載せたならラジオから出ている線をスイッチの真中と反対側のホルダーにハンダ付けする。
 3.用意したエポキシを混合しラジオと調整器をエポキシ樹脂接着剤で貼り付け、固まるまで輪ゴムなどで固定する。
 4.細い単線で直径4〜5ミリ程度長さ10ミリ程度のバネを作りビスに入れる。
 5.つまみをビスに取り付けてバネを調整する。
 6.固定した輪ゴムを取り除きラジオを綺麗にする。

(写真20) バネを付けたところ           (写真21) 接着して組み立てたところ

放送の受信をしてみる
 1.指定された電池をホルダーに入れ蓋をする。
 2.ラジオのイヤホン端子にイヤホンを差し込む。
 3.調整器のスイッチを上側にする。
 4.電源スイッチを入れて放送局を選択し、音量を調整する。
 5.スイッチを上側にする(竹炭ダイオード側に切り替え)。
 6.つまみを回して針を竹炭に接触させる。
 7.つまみを少しづつ回して針の先端を離したり付けたりしていき、最良の受信点を見つける。
 8.もしだめなときは炭の位置を調整する。(6.7を繰り返す、1分以内の方もいれば1時間かかった方もいました。)

(写真22)完成したラジオ

アンプを接続するときの注意事項
このラジオの場合は出力がオープンコレクターになっている為に250オームから350オーム程度の
抵抗をイアホン端子の出力に並列に接続すると良い。
基盤を出したときに回路上に抵抗をハンダ付けしておけばクリスタルタイプのイヤーフォンも使えます。

最後に
本研究は4価の元素中、最軽量の元素において電気的半導体の特性を実現したものであり
その知見において電気科学の分野において、炭の働きは炭素科学の基礎の一部として、高
周波ダイオードは一般の生徒に理解させる科学模型として優れているものと思われる。

その後,大豆と小豆を1000℃で炭にして、同じく点接触ダイオートドとして、実験を
行い、竹炭と同様にダイオードとして働いたことを報告します。2003/04/15




足利工業大学電気電子工学科 荘司教授、伊東助教授の両先生の協力よりに、竹炭のダイオード
のラジオが完成しました。ここで謝辞を申し上げます。


参考文献
[1]物理学辞典編集委員会編 山本 格 ほか 物理学辞典 株式会社倍風館 1986年11月30日版
[2]吉田 武著  マクスウェル・場と粒子の舞踏 共立出版株式会社 2001年5月25日版
[3]石田 哲朗 清水 東 共著 半導体素子 コロナ社
[4]高校用電子技術教科書 実教出版
[5]絵とき電気学入門早わかり 代表者 種田 則一 株式会社 オーム社 1985年12月20日版
[6]岸本 定吉著 炭  株式会社 創森社 1998年12月18日版

追記
竹木の白炭の半導体特性の判定について
12月初旬より熱電法において登田先生との共同研究の結果が18日に
出ました。土窯・鉄窯も白炭は全てP型半導体であるとの研究結果です。
詳細は2004年3月発行の足利工業大学附属高校研究紀要に収録されています。

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