今回は朝日新聞の世界の料理、柴田書店の儲かるシリーズのカレーなど世界中の料理の本を参考として
いますので、取り扱いには注意を要します
 これらを参考にして、約10年かけて料理を試行錯誤し、だれでも野外で楽しむことが出来るようなレシピを
作り出しました。
著作権を保有していますので、転載・コピー等を禁止します。ただし小中学校の教育としてはコピー可です。
幅の調整はして有りません。足利工業大学附属高等学校 2009年度 研究紀要に掲載しました。
2016年3月で定年退職しました。元電気科科長 足利工業大学総合研究センター客員研究員
香辛料のレッドペッパーまで修正しました。写真も殆ど載せました。
参考文献の修正を行いました。

                              最終修正日 2016/10/12
炭焼きの昼食に美味(おい)しい料理を作ってみよう
      (第5回 キーマ(ひき肉)カレーとナンに挑戦してみよう)
                    東京大学農学部研究生(松本雄二教授研究室)
                        岩ア 眞理  
                        Iwasaki MASATO


はじめに

 このシリーズを作るにあたり児童生徒が料理を作れることを主眼として、それぞれの料
理を3年以上試行錯誤しながら料理実験を行い炭焼き教室の、お昼の食事として楽しく誰
でも間違いなく美味(おい)しい料理が作れるようにマニュアルを作成したものである。内
容については出来るだけ児童生徒が導入しやすいように平易でかつ解りやすいように、そ
の始まりや、歴史的背景や科学的文献を最初に簡単に書き、それから料理の作成方法など
をまとめたものである。(それぞれの内容の詳細については参考文献を見てもらいたい。)


1.カレーの辛さの唐辛子とジャガイモの歴史

 現在のカレーの辛さは唐辛子の辛さで成り立っている。アメリカ大陸発見以前の西暦
1500年以前のインドでは唐辛子が無かったので、辛味の強い生姜や長胡椒(ロング・ペッ
パー)などの香辛料が使われていた。当時の日本では生姜のほかに山椒なども辛味として
使われていた。その後、大航海時代に入り、コロンブスによりアメリカ大陸が発見され、
1495年にコロンブスの第2航海に同行したクネオ卿が現地で使われていた唐辛子をヨーロ
ッパに紹介し、1569年にはスペインやイタリアで観賞用として家庭園芸品種として広まっ
た。このようにして中央アメリカ原産の唐辛子がヨーロッパにもたらされて、瞬く間に世
界中に広がってきた。この辛味のおかげで、現在のインドのカレーは確立したと言える。
皆さんがカレーと聞くと、たいてい日本式の肉、ジャガイモ、ニンジン、たまねぎの入っ
たカレーを思い浮かべると思いますが、また、ジャガイモは使われていない。このジャガ
イモの原産地はアンデスの高地の植物であり寒冷気候を好み暖かい地域では種芋が出来な
いことが原因と考えられる。そのジャガイモはウォルター・ローレイがヨーロッパ大陸に
取り入れた。そのジャガイモの花を観賞するために各地に広がりました。
 ジャガイモには毒素は無いが若芽にはソラニンという毒素が有り、当時エリザベス一世
が、その芽をたべ中毒にかかったためにジャガイモにも毒があると信じられていたために
食料とはなっていませんでした。ジャガイモを食料としたのは後のヨーロッパにおける飢
饉ががおこってからでしたからでした。ある日、宮廷のコックが、観賞用のジャガイモを
恐る恐る食べたのが始まりです。そして当時のプロシャのフリードリッヒ大国の命令によ
り大飢饉対策として冷害に強いジャガイモの生産の奨励したことや、フランスの16世は王
妃のマリー・アントワネットにジャガイモの花の飾りを付けさせて宣伝し、ジャガイモの
生産を奨励しました。そのおかげで飢饉の時も多くの方々が助かりました。しかし当時の
ジャガイモは現在食べられている種類と違い、美味しくなかったと当時の記録に残されて
いる。その後,1783年群馬県と長野県堺の浅間山の噴火により天明の大飢饉が起こり,同
年にアイスランドのラキ山の噴火により噴煙が成層圏に昇り太陽からの熱を遮ったために
北半球の温度が下がったのが原因でありヨーロッパも同じように飢饉が始まり小麦の不作
とともに,パンの値段が高騰し庶民の不満が積もりフランス革命(1789〜1799年)が起こり
ブルボン王朝の崩壊に繋がった。そしてジャガイモは瞬く間に冷害に強い作物としてヨー
ロッパ各地に広がり、ドイツは現在でもジャガイモの料理が豊富になっている。ただし現
在では小麦の作付け面積が大きくなりジャガイモの生産は減少している。
 日本にはジャワ島のジャガトラ港からオランダの船で伝来したことからジャガトラのイモ
からジャガイモの名が付けられた。日本で作付け面積では北海道が一番多いが新じゃがは
春の五島列島が日本一早く収穫され市場に出荷される。その後九州,四国の西から新じゃが
収穫され最後に北海道にたどり着く。関東地方より西の地域では年2回収穫することが出来
る。ジャガイモの種になるのは寒い地域で取れたジャガイモのみである。これはもともとの
原産地のペルーやアンデスの高地の作物であるからである。
 本題のカレー料理に使われているカレー粉の話を進めます。カレー粉というものはインド
には存在しません。カレーとはスパイスをふんだんに使った油煮料理の総称と考えられてお
り、カレーという特定の料理はありません。昔から、その家独自の香辛料を代々秘伝として
ブレンドして料理に使っているからです。
 当時のインドはイギリスの植民地でした、インドに滞在していたイギリス人は、このイン
ドのカレー料理を大変好んで食べていました。そして本国に帰ってもこのカレーの味が忘
れられずカレー料理が簡単に出来るように多くの方々が所望していた。
そのことにより、インドの家庭で使われている調合された香辛料のカレーペーストを真似
て、イギリスでもカレー料理が簡単にできるような調合した香辛料をC&B(クロス・アンド・
ブラックウェル)という会社が各種の香辛料を独自に調合してカレー粉を始めて作り上げ
た。その後、カレー粉が世界中に広まって行きました。日本では浅草の日賀志屋の創業者
の山崎峯次郎が(現在のエスビー食品)、C&Bのカレー粉を真似て独自に日本人に合うカレー
粉を作り販売を開始した。カレー粉の缶には日鳥印が印刷されていた。その当時は日鳥印の
カレー粉として売られていた。その、お日様は英語でSUN、鳥はBIRDからSUN&BIRDからS&B
がヱスビー食品の名前となった。その日本でカレーが広まったのは色々な説があります。
ひとつは徴兵制で各地から人が集められ、軍隊の食事にカレーライスがあり、そして除隊
となった人たちが各地に、このカレーライスを伝えたので瞬く間に日本中に広まった。東
京でハイカラな料理として多くの方々が食べ、その調理方法(レシピ)が全国に広がった。
特にまた日本でカレーライスが広まったのは明治25年頃にライスカレーと呼ばれたカレ
ーライスが飲食店のメニューや婦女雑誌になどの家庭雑誌に登場しました。当時としては
ハイカラな食べ物でありました。そしてカレー粉の偽物も多く出ましたが、以外にも、偽
物のカレー粉も美味しかったことも広まりの一つとして考えられます。現代は、昔と違い
現在の日本ではカレー粉を使用して、最初からカレーを作ることは少なくなっています。
忙しい社会のために手軽に、しかも簡単に出来る料理へと変化して行きました。野菜や肉
を炒め、それに市販のカレールーを加えて煮込むだけの手軽さがうけた。そして子どもの
一番好きな料理の代表的なものになっていること、また簡易に食事が取れるように開発さ
れたレトルトパックの様に袋のまま暖めるだけの手軽さのある料理方法が開発され、その
中の一つにカレーがあり簡単に手に入ることになっている。日本の飲食店ではカレーのメ
ニューが殆どあり、そして日本式のカレーも研究を重ねてより美味しいものが作られてい
る。また本格的なインド式のカレー店も増えつつあり、それぞれが日本の文化と融和して
きている。

2.インドの料理
 インドの北部では気候の関係から小麦が主食そして肉料理が多く、南部では米が主食で
野菜料理が多く、東部のベンガル地方や西部のゴア、ケラーラ地方の海岸地帯では魚料理
が多くなっています。日本で使っている牛肉は宗教上(ヒンドゥー教83%、イスラム教11%)
の関係から使わないが、その代わりに鶏肉や羊の肉は良く食べられている。今回は羊では
なく日本で簡単に手に入る鶏肉と豚肉のひき肉(ミンチ)を使いキーマカレーを作ります。
また北インドは紅茶の文化圏に対し、南インドはコーヒーの文化圏になっている。そして
北インドはイスラムの文化の影響を受けた料理も多い。つぎはインドの町や村の、どこで
もいる牛の話でなく、ちょっと変わった牛乳の話をします。世界中どこでも牛は沢山いる
が、インドでは牛は神聖な動物とされいます。その牛の主な特徴はなんと言ってもコブを
持ったコブウシと呼ばれているインド牛が広く分布しており、その牛から搾った牛乳など
を各種の処理をすることにより多種多様な乳製品に変えられています。インドは夏場日中
の気温が45℃を超えることが多く、そのまま牛乳を生乳として流通できないので乳酸発酵
など処理をして別なものに変えて保存食品として流通させている。この乳酸醗酵処理では
ダヒ(ヨーグルト)、スリカーンドになり、チャーニング、(攪拌)処理後、インドバター
オイル(ギー)、パニ−ル(カード)、チェルピーなどになり、酸添加凝乳処理ではチャ
ーナ、ホエー、加熱濃縮処理ではキールコア、ラブリー、マライ、乳酸醗酵と酵素を加え
た処理ではスラーテ、ダッカなどのチーズになります。この中で、注目するところは加工
乳の中で特にギー(バターオイル)は全生産量の45パーセントを占めています。
昔のインドの乳製品の利用は紀元前のヴェーダの時代に遡って牛乳を利用してきました。
 仏陀成道(じょうどう)の伝説によれば、釈迦は娘のスジャータの捧げる乳糜(にゅうび)
を受けて健康を回復し、最後の思惟に入ったその翌朝、開けの明星を仰いだときに光輝き、
悟りは開け、仏になったと、(紀元前431年12月8日)伝えられていることから、イ
ンドでは乳製品が紀元前10世紀ごろから使われてきたことが解ります。
現在の研究で
は乳糜(乳粥)は多分、ダヒと呼ばれているヨーグルトではないかと言われています。
インドではカレーという言葉はタミール語でソースを表します。但し、スリランカでは日
本のカレー粉に近いものは有るようです。そして、味の基本(うまみ調味料)にモルジブフ
ィシュを一般的に使っています。
モルジブフィシュは鰹節の元祖のようなものです。意外
と日本の鰹節のルーツかもしれません。モルジブフィッシュは生の鰹節に近いものです。
コールマーインド料理の女王と呼ばれ、ムガルの宮廷で愛された料理です。ヨーグルトに
肉を漬け込み、臭みを抜いた肉を高級な香辛料をタップリと使ったソースで煮込んだもの
です。アヒルや牛肉も使われます。コーフターカレーは羊又は牛肉のひき肉を石臼ですり
つぶし、香辛料とつなぎに小麦粉や豆の粉を振り込みクルミ大に丸め、ココナッツミルク
のカレーに入れて煮込んだものです。インド南部の料理は米飯を主食とし、乳製品よりも
ココナッツミルクを多用する。また香辛料の種類も北に比べて独特なものを使うことが多
い。例えば北インドではクミンを使う場合は南インドでは黒からしの種やカレーリーフを
用いる。油はギーよりも、からしやゴマ油が多く使われる。また菜食主義者が多いために
肉を使わず野菜を中心とした料理が発達しているが、一方で魚を使った料理も多彩である。
北は長粒種(インディカ米)を良く使うのに対し南の米は丸く、外見は日本のものに近いが
粘りは少なく、パサパサとした状態で出される。さらに油も北ほど多く使わずにあっさり
としていて、日本人の口に合うと言われている。正餐は水で清めたバナナの葉に盛られ、
サンバールとご飯、ラッサムとご飯、ヨーグルトとご飯の順に出され、これらに数種の副
菜、アチャール、チャトウニーを付け合せる。なおインドや東南アジアには、その土地の
料理が沢山あり、ここでは紹介し切れません、もしいろんな東南アジアの料理を覚えたい
のなら、ぜひ現地へ行き自分の目で見て、自分の舌で味を覚えると新しい発見もあり、腕
も上達すると思いので、ぜひ挑戦してください。


3.香辛料の話(カレーに使われる代表的な香辛料)

 カレーに使われている香辛料の代表的なものはレッドペッパー、ターメリック、コリア
ンダー、クミン、ジンジャー(しょうが)、ガーリック(にんにく)、レモングラス、マンゴ
ー(アムチュール)、シナモン(肉桂)、ローレル(月桂樹)、ペッパー(コショウ)、マスター
ド(カラシ)、カルダモン、メース、カレーリーフ、フェネグリーク、こぶ蜜柑などが使わ
れる。
 
レッドペッパー(唐辛子)はメキシコ原産でナス科唐辛子属の一年草である。熱帯地方で
は多年草である。辛味の元であり、1495年の第二航海のコロンブス一行のクネオ卿がスペ
インに持ち帰りその後、世界中に広がっていった。16世紀にはインドに伝来した。辛味の
ほかにはビタミンCを多く含む。日本には1542年にポルトガルの宣教師が日本に持ち込んだ。
最初は観賞用として用いられた。その唐辛子は、瞬く間に全国に広がり、秀吉の時代のこ
ろには朝鮮半島に渡り辛いキムチの漬け物が出きるようになりました。唐辛子の成分は、
その土地の状態により、辛さや形、甘さなどが変わります。そして唐辛子は、年々改良を
施させて独特の辛さや甘さを持つように改良された。日本では辛い唐辛子の代表は鷹の爪
ですが、日本でも良く使われているアメリカからの輸入品のタバスコソースも変わった唐
辛子です。タバスコソースは水分の多い唐辛子なのでなかなか乾燥しにくく、何とか使う
ことが出来ないかと知恵を絞り、商品化を考えて、唐辛子を磨り潰したものに醸造酢を加
えたたるの中に入れて寝かせ、熟成させたものが唐辛子ソースのタバスコソースです。
アメリカではタバスコソースを使った料理も多いそうです。現在ではこのタバスコソース
には赤い完熟タイプと青唐辛子のグリーンペッパーの2つが有ります。世界中には辛くな
い代表として黄色の着色料として有名なパプリカや同じような唐辛子を大きくしたピーマ
ンなどが有ります。以前はこの種は一部の国だけの独占でしたが、現在では世界中で栽培
されています。日本の唐辛子の生産地として、以前は栃木県の真岡地域が一番多かったの
ですが、現在でも真岡地域ではカレー用に唐辛子を契約栽培としで作られているようです。
また唐辛子の辛味はカプサイシンという成分です。このカプサイシンは体の中に入ると、
脂肪を燃やす働きがありますので、痩せたい人で胃の丈夫な方はたくさん食べて痩せてく
ださい。唐辛子のかすかな甘みはベタイン、うまみはアデニン、赤色はカロチン、B1,B2,C
ナイアシン、カリウム、リンなども多く含んでいる。
 ターメリック(秋ウコン)は生姜科の多年草で粉末にして黄色の着色剤として使われる。
原産地は東南アジアで健胃生薬として使われている。
 コリアンダーは地中海地方原産のセリ科の香菜(シャンツァイ)の種子を乾燥させたス
パイスのことです。レモンとセージを混ぜ合わせたような香りと甘くマイルドな味、かす
かな辛味があります。
 クミンはエジプト原産のセリ科のクミンの種子を乾燥させた物です。クミンはキャラウ
ェイによく似た種子ですが、まったく違った強い刺激的な芳香と、わずかな苦味と辛味が
あります。クミンはカレーの中心的な香料です。
 ジンジャー(生姜)はショウガ科の多年草で南アジア原産。熱帯地方では秋に黄緑色の花
が咲ますが、日本で殆ど咲きません。 世界各地で薬や辛味の香辛料として使われています。
辛味の成分はジンゲロンやショウガオールで香りはジンギベレンである。たんぱく質分解
酵素のプロテアーゼを含み、肉に生姜を漬けておくと酵素の働きで肉が柔らかくなる。薬
としては血行を良くし、発刊作用、咳を静める作用がある。
 ニンニク(ガーリック)は、ねぎ科で原産地は中央アジアのキルギスです。ニンニクの栄
養主成分には、アイリン、クレアチンなどがあるが、これらは無臭であるが潰したときに
細胞が壊れ中からアリナーゼなどの分解酵素が出て栄養成分を分解し臭いの成分になる。
ンニクは滋養強壮の効果がある。ただし生のニンニクは刺激が強過ぎて胃壁などを痛める
場合がある。
 レモングラスはインド原産のイネ科のハーブで、ススキのような葉と茎にレモンのよう
な香りがあり、東南アジアでは酸味のないレモンとして、肉や魚の匂い消しやカレー料理、
スープなどに使われる。レモングラスに含まれるシトロネラオイルは、虫除け材として使
われる。
 マンゴーはインドからインドシナ半島が原産地である。マンゴーの木は常緑高木で、樹
高は40メートル以上に達する。果皮は緑色から黄色、桃紅色などと変異に富むが、果肉は
黄色から橙紅色で多汁。未熟果は非常に酸味が強いが、完熟するとほとんど酸味は無くな
って甘みが強くなり、松脂のような独得の香りを持っている。チャツネとして甘い酸味料
として使う。

 シナモン(肉桂)の原産地は中国南部からベトナムあたりである。熱帯地方のクスノキ科
の常緑樹のシナモンの樹皮から作られる。独特の甘みと香りと辛味を持ち合わせたもので
ある。最古のスパイスと言われ、エジプトではミイラの腐敗防止として使われた。
 ローレル(月桂樹)の原産地は地中海沿岸の常緑低木です。月桂樹の葉を乾燥させてから
使用する。すがすがしい香りにより肉の臭みを消す働きがある。長時間煮込むと苦味が出
てくる。月桂樹の葉に含まれるシネオールという芳香成分は食欲の増進や消化を助け、肝
臓の働きを強くする働きがある。
 ペッパー(黒コショウ)はインド原産の香辛料である。辛味成分が強く抗菌作用がある。
黒胡椒は皮付きのまま挽いたものである。白胡椒は皮を取って挽いたものである。グリー
ペッパーは完熟する前の緑のままの物を乾燥させ、粉末にしたものである。南インドでは
紀元前500年ころから栽培されていた。唐辛子が入る以前の辛味は胡椒と生姜であった。
 マスタード(洋芥子)は黒芥子と白辛子の種子の粉末です。黒芥子はレバノン近辺、白芥
子は地中海沿岸。最初は湿布薬として使われていた。油を多く含んでいるので油を絞って
から粉末香料として使う。和芥子はカラシ菜の種子である。
カルダモンは生姜科の多年草、原産地はインドから東南アジア地域で実を用いる。樟脳に
煮た独特の芳香を持ち、肉料理の匂い消しに用いる。
 メースの原産地はモルルッカ諸島である。果実の種子を取り巻いている仮種子を使う。日
本語名はニクズクでナツメグは朝鮮語である。メースは皮でニクズクは中の種子である。
甘く刺激的な芳香がする。メースの方がニクズクより刺激が少なく上品な香りがする。整
腸、口臭消し作用がある。
 カレーリーフはミカン科のオオバゲッキツで南インドからスリランカである。日本名は南
洋山椒で脇役の香辛料としてつかわれる。種子には毒を持っているので注意をようする。
フェネグリークはマメ科の一年草で原産地は西アジアとギリシャである。カラメルのよう
な甘い香りが特徴である。チャツネの材料として用いられる。また健胃生薬として使われ
る。
 こぶ蜜柑(バイマックルート)は東南アジア原産のミカン科カンキツ属の常緑樹で柚子の
ような形状で表面にごつごつとした瘤状の形からこぶ蜜柑と名ずけられました。山椒のよ
うな芳香と柑橘系の香りを持つ葉です。ライムリーフと呼ばれグリーンカレーなどに欠か
せないハーブです。

4.その他の香辛料や調味料

チャツネ、ココナツミルク、ニョクマム(ナンプラー)
 チャツネは野菜や果物ハーブから作る甘いペースト状の調味料である。カレーにはマン
ゴチャツネを用いる。甘さと酸味を加えるにはマンゴーチャツネ(マンゴーのスライスに
砂糖、ガーリック(大蒜)、ジンジャー(生姜)、酢、チリ(一味唐辛子)−パウダーを加え煮
込んだもの)やアムチュール(マンゴーの未熟の物を乾燥したもの)が使われています。


 ココナッツミルクはココヤシの果実であるココナッツは成熟果実の胚乳を削り取り乾燥
させたものである。これを水に漬けて揉みだしたものをココナッツミルクという。

 ニョクマム(ナンプラー)は東南アジアで魚を塩に付けて発酵させた魚の醤油である。魚の
たんぱく質が分解されて出来たアミノ酸と核酸を多く含む。日本の代表的な塩味の調味料
では豆を主とした醤油という代表的な調味料が有りますが、東南アジアでは魚、烏賊や海
老などを塩で醗酵させた醤油の魚醤(ぎょしょう)が多く見られます。一般的にはベトナ
ムではニョクマム、タイではナンプラー、フィリピンではバゴーン、カンボジアではタク
トレイ、マレーシアではサンバル、韓国ではセウジョッと呼ばれている調味料です。
東南アジアでは全ての料理のベースになっています。日本では秋田で有名な魚汁醤(しょ
っつる)が有ります。 また、カレーの隠し味として加えたり、その国の各種の料理にも
加えていますので味も、その地方独特の味になります。アジア地域のカレーの中の隠し味
としても言うこと無しです。

 トマトも味を引き締め、まろやかさと酸味を加えますし、トマトはカロチンの含有度が多
いのが特徴です。日本の生食用トマトは酸味が多く、種類が違い生食ではよいのですが、
カレー料理には合いません。ここでは一般的に出まわっているイタリア産やスペイン産な
どの西洋トマトのホール缶詰を使います。玉ねぎはゆっくりと加熱すると元の50倍以上
の甘味が出てきます。ですから時間がかかるけれど、ゆっくり時間をかけると何でもおい
しくなります。


5.カレー粉や香辛料の入手とルーツなどについて

 日本で手に入れることの出きるカレー粉はヱスビーが一般的ですが、良く探せばアナン、
朝岡香辛料、アジャンタ、中村屋、ナイルレストラン製のものなどが有名デパートの食料品
売り場で見つかると思います。 ついでに香辛料の棚も覗き込んでください。たいてい60
品目はあると思います。入れ物も意外と簡素なものから綺麗な物まで多種にわたっています。
 その中でインドのカレーは、たくさんの香辛料(10種類から40種類)をブレンドして
作りますが、その中で辛さを出す香辛料としては、唐辛子が一番なのです。


6.インドのナンについて

 イースト菌を使わず、小麦などに含まれる野生酵母菌を自然発酵させた種で発酵させた
生地を、タンドールと呼ばれる窯の内壁に貼り付けて焼いたもの。全粒粉を使う場合が多
い。
ナンの作り方(1)
ナン材料の用意(4人分) 正式版
全粒粉又は強力粉300g   ドライイースト10g   三温糖(または砂糖) 15cc
塩5g ぬるま湯340cc 卵1個(無くても可) プレーンヨーグルト 50cc 油 適量
ステンレスボール、500ccの軽量カップ、発泡スチロールの箱(ステンレスボール入れる)
ステンレスボールに被せる蓋、軽量スプーン、料理用粉フルイ、料理用秤、テーブル、
のし板、のし棒、かき混ぜ棒、冬はインスタント懐炉など
ドライイーストと砂糖を、ぬるま湯に入れて、かき混ぜる。この時ドライイーストが完
全に溶けるまで混ぜる。次に塩を混ぜる。粉はフルイを通してステンレスボールに入れる。
次に卵を割り入れたら、プレーンヨーグルトとドライイーストの入ったぬるま湯を入れて
よく捏ね、手に付かなくなるまで行います。そして約一時間発酵をさせる。発酵したら一
度、中の空気を抜き4等分にする。

ナンの作り方(2)
ナンの材料(5人分)アター(全粒紛)を使った簡易版
アター(全粒紛)500グラム、無ければ薄力粉と強力粉の混合。
ベーキングパウダー 小匙1杯、牛乳 100cc、水100cc
プレーンヨーグルト 大さじ2杯、卵1個、塩小匙 1杯、バター1かけ
上の材料を、よくかき混ぜて耳たぶくらいの硬さにします。
本当はベーキングパウダーの代わりにイーストで発酵させたほうがきれいな仕上がりになる。
もしも粉が乾燥している時は適当に水を加えてください。
乾燥しないように蓋をして1時間ほど寝かせたら、5等分に切り分けておきます。

ナンの作り方(3)
スーパーマーケットなどでナンミックスを購入して、指定どおりに作る。

ナンの焼き方(外での調理方法)
 ここでは炭焼きの食事としての料理法です。用意するのはバーベキューコンロで半分が
網焼きと残りの半分が鉄板の物を用意してください。また風よけとしてコンロを囲う板な
ども合わせて要してください。炭は炭焼きの竹炭を利用してください。これでバーベキュ
ーコンロで意外と簡単に焼くことが出来ます。まずバーベキューコンロに竹炭を入れて火
を点ける。網と鉄板は火の上に載せて暖めておくこと網側は炭火との距離を多く取る。こ
れは炭からの遠赤外線を利用して生地の内部に熱が届くようにする。もし風が吹いている
ときは周りを板やダンボールで囲み、風でナンが冷えないような工夫を施すこと。
 ナンの生地をのし板の上で適当に伸ばす。適当とは自分に合った厚さとします。これは
経験によって自分の好みの厚さに調整してください。最初は4-7o程度厚さにします。鉄
板に油を薄く延ばしナンの生地を載せて表面を軽く焼く、片側が焼けたら反対側を同じよ
うに焼き、表面が焼けたなら網の方に移し遠赤外線の働きで内部を焼く、この時の加減は
表裏面を奇麗に本焼きすると内部にも、よく熱が通り綺麗に良く焼ける。

ナンを作るのが面倒な方は調理済みの冷凍のナンを購入して電子レンジで解凍する。


7.基本のカレーパウダーの作り方(料理の最初に使う香辛料)

 乾燥赤唐辛子  4から6本、コリアンダー   25g、クミンシード   4g
 マスタードシード    2g、ブラックペッパー  4g、フェネグリーク  4g
 カレーリーフ     10枚、ジンジャー     2g、ターメリック  12g
 各香辛料を粉末にして混ぜ合わせる。
 この材料が無いときは市販のカレー粉を一缶用意する。メーカーは何処でもよい。
 お勧めはです。写真11はアターの中辛の生カレー粉ですが、下記の写真はSBから手作
 り用キーマカレーが発売されている。



 
 基本のガラムマサラ(料理の途中で使う香辛料)
 シナモンスティク   2本,   ローレル    3枚, クミン      40g
 コリアンダー     25g,   カルダモン   20g, ブラックペパー  20g
 クローブ       15g,   メース     15g
 各香辛料を粉末にして混ぜ合わせてガラス瓶などに入れておく。
 用意できないときは市販のガランマサラを用意する。シナモンはあまり多く入っていな
 いものを選ぶ。写真11はアターのガラムマサラ


8.キーマカレーの作り方
 
 キーマカレーの作り方(10人分)手っ取り早くカレー粉を使う方法
 材料の用意
 油(バターと食用油 有ればギー)50cc、大蒜2かけ、生姜小1個(30グラム) 
 ナンプラー 大さじ1杯 コリアンダー 大さじ1杯 クミン 大さじ1杯 
 ローレル 粉を小さじ1杯 チリーは最後の辛味の調整用 ターメリック 大さじ1杯
 牛乳100cc 胡椒少々
玉葱 中2個(150から200グラム)、ひき肉 好きな、
 ひき肉200グラム(良く混ぜ合わせておくこと)
 カレー粉40グラム〜50グラム(アナンのがあれば香りも最高)、ガランマサラ 小匙
 2杯、マンゴチャツネ 大さじ2杯、レモングラス 粉末を大さじ1杯
 塩 小匙1杯、プレーンヨーグルト 100グラム、ココナッツミルク1缶、(400グラム)
 トマトの缶詰1缶(400グラム)、グリーンピース 適当


 キーマカレーの準備
 大蒜(にんにく)と生姜(しょうが)は摩り下ろすかみじん切りにしておきます。
 ひき肉はもう一度、包丁で細かく叩いて良く合わせておきます。
 玉葱は、みじん切りにしておきます。

 キーマカレーの料理手順
 鍋に油(バターと植物油半々あればギー)を入れて150度くらいに熱します。
 用意した大蒜と生姜を入れて、良く油で炒めて、大蒜と生姜の香りを油に移します。
 次に大蒜と生姜を取り出します。(今回は面倒な方は、そのままでも可)
 次に刻んだ玉葱を鍋に入れて、15分以上じっくりと狐色になるまで、丁寧に炒めておきます。
 本当はここで目の粗い網で裏ごしするとおいしいよ。
 ひき肉も別に炒め荒目の網で裏ごしすると滑らかになります。
 フードプロセッサーなら言うこと無し、最高の者が出来ます。
 炒め終わったら、ひき肉を入れ、2,3分ほど肉全体に熱が入るまでいためます。次はコリアンダー
 とクミンを大さじ1杯ずつ入れて、カレーの基本の香り付けをします。出来ればターメリックも大さじ
 1杯入れ、ローレルは粉末を同じく1杯入れ救いためます。

 カレー粉の半分をいれて炒めて香りを出しておきます。
 ここで2分ほど弱火で炒めます。
 次に裏ごしされたトマトをいれて5分ほど炒めていきますと水分が減っていきますので。ここでプレ
 ーンヨーグルトと100ccの牛乳を加えますとだいぶカレー本来の色が出てくるはずです。ヨーグルト
 と牛乳の関係でやや白っぽくなりますが味は酸味が付きおいしくなってきます。
 ここで残りのカレー粉を加え球が出来ないようにかき混ぜ、生と炒めたカレー粉の2つの香りを合わせ
 ておきます。
 次にマンゴチャツネの瓶から大さじ2杯取り出し、包丁やナイフで細かく刻み、そのマンゴチャツネを
 鍋の中に入れて煮込みます。

 ここで甘酸っぱい香りがついてきます。
 隠し味の登場です、スプーン1杯のナンプラーを入れます。
 なければ醤油でも可、ショッツルの方が近い味になります。
 次に良く振った缶詰のココナツミルク開けたら、再度良く攪拌して沈殿しているミルク分を溶かします、
 そして、鍋に入れよくかき混ぜます。
 大体2分ほど丁寧に攪拌しまとやや色が薄くなります。
 塩分の調整です。味見をしながら塩を少しずつ加えて塩加減を調整します。
 そしてレモングラスの粉末を小匙1杯ほど加えて香り付けをしてから、最後の味の調整としてガランマサ
 ラを少しずつ加えて味見をしながら調整し、その後10分ほど弱火で良く煮込んで出来上がりです。
 それから、10〜13センチのお皿に取り分けて下さい。
 これで簡単なキーマカレーの出来上がりです。
 仕上げの彩りを良くする為に、茹でたグリーンピースを散らすと申し分ないと思います。
 これでキーマカレー・ナン付きの完成です。
 もし味が辛いのが好みでしたら、チリペッパーを少し振りかけてください。


  このキーマカレーは普通のご飯を油を入れてグリーンピースなどと一緒にフライパンで炒めて、
 出来ればサフランで香り付けて、お皿に乗せ、真中にくぼみをつけて、その真中にキーマカレーを
 載せてください。
 ついでに野菜のサラダを付け合せ、冷たい牛乳にプレーンヨーグルトを混ぜ合わせた飲み物を用
 意しますと、これでも1つのサフランライス・キーマカレー、サラダ、飲み物付きの一品が出来上が
 ります。ぜひ試してください。


写真1 ニンニクを用意 写真2 ニンニクをみじん切り
写真3 タマネギの用意 写真4 タマネギのみじん切り
写真5 バターを溶かす 写真6 タマネギ、ニンニク、しょうがを炒める
写真7 色が付くまで炒める 写真8 ひき肉をいれ炒める
写真9 ホールトマトを入れて炒める 写真10 ヨーグルトを入れて炒める
写真11 香辛料を加える 写真12 キーマカレーの出来上がり
写真13 コンロに炭を入れて火を付ける 写真14 コンロに鉄板と網を載せる
写真15 鉄板に引き伸ばしたナンを焼く 写真16 炭火で中を焼く



 参考文献
( 1) 野本 信夫,儲かるメニューシリーズ,カレー,柴田書店,1996,東京
( 2) ジル・ノーマン,スパイスガイドブック,山と渓谷社,1993,東京
( 3) 永瀬 正人,評判肉料理の調理技術,旭屋出版,1999,東京
( 4) 永瀬 正人,洋食メニュー調理技術,旭屋出版,1999,東京
( 5) ハウス食品マーティング室編,ハウスポケットライブラリー,辛子遍路,ハウス食品,1988
( 6) 野沢 敬,世界の地理,インド北部・東部,朝日新聞社,1985
( 7) 野沢 敬,世界の地理,インド南部・スリランカ,朝日新聞社,1985
( 8) 野沢 敬,世界の地理,インド北西部・パキスタン,朝日新聞社,1985
( 9) 野沢 敬,世界の地理11,ラテンアメリカ・中央アメリカ諸国,朝日新聞社,1985
(10) 藤田 雄三,世界の食べもの48,インド亜大陸1,朝日新聞社,1981
(11) 藤田 雄三,世界の食べもの49,インド亜大陸2,朝日新聞社,1981
(12) 藤田 雄三,世界の食べもの50,ヒマラヤ,朝日新聞社,1981
(13) 石毛 直道,食の文化シンポジュウム’80・人間・たべもの・文化,平凡社.1980
(14) 重野 洋子,アジアのお母さんの味,日本放送協会,2000
(15) 第一学習者編集部,最新地理図表GEO,第一学習者,2006
(16) プレジデント社編集部,月刊dancyu 7月号,プレジデント社,2007
(17)
北村四郎・本田正次監修,週刊朝日百科,世界の植物1-120号,PP1-3416,朝日新聞社,1977

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