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最終修正 2006/12/12

                                               平成16年度研究紀要
炭の基本について
            足利工業大学電気電子工学科非常勤講師
            足利工業大学附属高等学校電気科教諭 岩
ア 眞理

1.木や竹から炭が出きるまで
  木は幹、枝、葉、根、花(種子)などから出来ています。
木や竹の幹の中には水を
運ぶ道管や葉から栄養を運ぶ師管があります。
種子の中には大切な木の遺伝子が入っ
ています。葉の中には細胞があり緑の色の元の葉緑体や各種の物質が詰まっています。
そして葉の色が緑色に見えるのは、太陽の光には全ての色があり、葉はその中の赤色を
吸収し緑色を反射させているのです。
木や竹などの植物は全て色々な種類の細胞の集合
体から出きています。これらの木や竹を調べてみると多くの成分から成り立っているこ
とが分かります。
 
葉の中の葉緑体は、葉の裏の気孔から、空気中の二酸化炭素を取り込み、根から吸
い上げた土の中の成分と水を使って酸素と栄養分(炭素化合物)を作り出します。この
栄養分が木を育み(はぐくみ)、生き物は酸素と果実などを木(植物)から貰っています
し、根などは土の流出を防ぎ雨水をためる働きをします。
 
秋になると葉は枯れ落ちて、地上に堆積し細菌やバクテリアなどにより分解して、
腐葉土として木の栄養となって根から吸収されて戻ってゆきます。このときに一部の
分解ガスの代表であるメタンガスは地球温暖化を助長する働きとなります。
 
そして大きく育った木は人間の為に色々な物に加工されます。
植物は水と光と金属類などの助けを借りて、二酸化炭素を吸収して光合成により
必要な成分を作り出し木々を大きくしてゆきます。
 新芽が出たころはアルカリ金属のカリウムが大量に必要になり、その後はリンが大量に
必要になってきます。(大森先生の炭の働きから抜粋)
 
木や竹は板や柱としての建築材料や土木工事の材料としての利用や、装飾品、
工芸品など各種の所で利用されています。
そして炭材としての利用も多く見られます。
 木や竹から炭を作るには、伐採(ばっさい)された木や竹を燃やさないで高熱
を加えることによって、木に含まれる成分を蒸発させたり、熱分解させたり、また
成分を酸化還元反応をすることにより、色々な成分を木や竹から追い出すことにより
炭が出来ます。セルロースやヘミセルロース類(200℃前後)やリグニン(400℃前後)などが
高熱により熱化学反応をして木の中から出て行きます。
この追い出された物質は木や竹の
外へ煙として出ていってしまい、残った物質が炭となるわけです。
この残った成分の中で
一番多く残っているのが炭素です。
そのほかにも熱に強い成分も含まれています。
この成分を一般的には、ミネラルと呼ばれています。(一般的には灰分と言います)
 植物に含まれている成分でカリウム、カルシュウム、マグネシュウムなどの金属は酸化
物になり水に溶けるとアルカリ水溶液になり、酸性土壌に撒くと中和します。
 要するに、炭とは木や竹に熱を加えて、炭素以外の成分を追い出した、残り物の
残りかす(粕)が炭ということになります。また煙の中の成分をステンレス(SUS304)の
煙突に通して外側を冷却しますと煙の中の成分が液体になって回収されます。
 木の場合には木酢液、竹の場合には竹酢液と呼ばれます。
この成分の主なものは3%〜5%の濃度の酢酸やぎさん(蟻酸)など300種類以上の
成分が多く含まれている為にpHを測って見ると濃いものでpH2.2程度から薄いもので
pH3.8位の酸性を示します。

 2.炭を燃やすと何が残りますか?
 炭を燃やすと、炭の中の炭素は空気中の酸素と反応(燃える)することにより、
二酸化炭素と熱に変わり植物が吸収した金属成分は酸化物に変わります。このときの
熱量は炭1gで29.4kj(7kcal/g)1)と言われています。ですから炭の熱パワーはもの凄い
のです。この炭が燃える時に酸素の供給量が少ないと、危険な一酸化炭素が出来ます。
もし人間が一酸化炭素を含んだ空気を吸うと、血液のヘモグロビンと結合して、体に必要な
酸素が付かなくなり、酸素を身体の中に運べなくなり、細胞が酸欠の状態となり、人間は
危険な状態になってしまいます。炭が完全に燃えてしまいますと、一般には灰と呼ばれる
物質が残ります。この灰を水に溶かしてpHをはかってみると、一般的にアルカリ性を示し
ます。

3.灰の利用方法
 食品への利用として、私達の身の回りにある、せっけん(石鹸)作りやラーメンに使
うカンスイやこんにゃく(蒟蒻)作りなど食品を美味しく食べられるように使われます。
こんにゃく(蒟蒻)の製造は中の成分(マンナン)がアルカリによって固まる性質を利用し
たものです。
 現在ではアルカリ性の石灰などを使って固めています。ラーメンの麺を作るときに
使われるカンスイは小麦粉のたんぱく質の成分を変化させてラーメンの麺がよく伸びる
ようにした化学物質です。もともとの原料は中国のモンゴルの砂漠地域に生えている草を
乾燥させて燃やし、その残った灰に水を加えたものが最高のカンスイと言われています。
しかし現在市販しているものはJAS(日本農林規格)により化学的に作っています。
 また日本人はゴビ砂漠と呼ぶ方がいますがこれは間違った使い方です。中国に行きます
と必ず次のように言われます。ゴビは大小の石ころの原野で砂漠は文字通り砂の原野
です。
 石けんは昔の人が肉を火で焼いた時に、その油が灰の中に落ちたのが石けんの
大元となっています。アラブのお金持ちの方は灰を使った石けんを使っています。
でも草木灰から作る石けんは3年以上の時間がかかります。
 濁(にごり)酒に灰を入れますと、濁りが沈殿し奇麗な澄んだ酒に変わります、これ
から清酒という名前が付けられました。(良く聞くのが山灰仕込み)
 そして草木灰は焼け残った残り物の酸化物などの集まりですが、特に熱に強いことから、
耐熱材料として使われます。電気ヒーターの一部にも灰を固めたものか使われています。
特に酸化マグネシュウムが一番多く使われています。酸化マグネシュウムは熱伝導性と不導体
の性質を持っています。
 灰を高温度で溶かして、細い糸を大量に作り、毛布状にして、高温度の断熱材、
保温材として使う材料も出来ています。これらはセラミックブランケットと呼ばれ
1500℃以上の高温に耐える物も有ります。用途は窯業の断熱材や駐車場の鉄部の
焼損防止として使用義務が規定されています。

4.炭は大きく分けて2つに分けられます。
 炭には800℃以下の低温度で焼いた炭と、800℃以上で焼いた2種類の炭に分類する
ことが出来ます。まず低温度で焼いた炭を黒炭(くろずみ)と呼びます。この炭の組
成は低温度で焼くために、匂いを嗅(か)いでみると少し匂いが有ります。そして炭を
燃すと懐かしい炭独特の香りが出てきます。また低温の為に柔らかな炭となり燃えや
すい炭となります。
 黒炭は作るのが簡単な為に日本では大量に作られています。 次に800度以上の
高温度で焼いた炭を白炭(しろずみ)と呼びます。高温の状態で焼きあがった炭を直
ぐに窯から取り出して灰や土の中で冷ましたもので、この炭を掘り出したとき灰が付
着して白く見えたことから白炭と呼ばれています。高温度で焼くためにミネラル分は
ガラス質になっていますが炭は炭素本来の化学的性質が多く現れて来ます、また炭は
硬くなっています。高温度の窯を作るのと焼くときの空気の調整が大変なので、生産
量はやや少な目です。
 この中で白炭の代表的なものがうばめ樫の白炭です。この炭は元禄時代に備
中屋長左衛門が高温の窯を作り出し、その窯でうばめ樫等の硬質の木を
焼いた事により、この姥目樫等の白炭を備長炭(びんちょうたん)と呼んでいます。
 馬目樫はもともと樫の木の葉の形が馬の目に良く似た形からつけられたそうで
す。でも別な解釈もあるそうですので皆さんも研究してください。
 今まではドラム缶の炭焼き窯では白炭を作ることが出来ませんでしたが、3年前
に私が白炭の焼ける簡易窯を開発して、岩崎式高速炭焼き窯と上毛新聞の記者
が新聞に書きましたのが始めです。私が付けたのでは有りません。
 この窯で1000℃以上の温度にして竹の白炭を皆さんで作ってみましょう。

5.炭の利用方法
  5-1.熱源としての利用方法
 炭火の利用については、一般的には料理の熱源として利用するものが主な使い方で、
焼肉料理やうなぎの蒲焼や焼き鳥などの熱源として、一番多く白炭(備長炭)が使わ
れています。
この備長炭に代表される固い炭(白炭)は遠赤外線が多く発生するので、
その働きで肉の内部から温める性質を持っていますが値段が高いのが難点です。
一般的に使われている黒炭は値段も安い為に同じように使われますが、白炭より
遠赤外線の量が少ないのと火持ちは弱くなっています。
でも炭火で焼いた肉や魚はガ
スで焼くより中心部から焼けていますので、とても美味しいものが出来ます。
 
皆さんも、たまには庭で炭火を使った料理を楽しんでください。私の場合はピッツ
ァの窯も竹の白炭火をたまに使っています。
また燃えている炭に強制的に空気を入れ
ますと高温度になり鉄を溶かすまでの温度になります。この性質を利用したのがたたら
製鉄です。炭と砂鉄を交互に重ね、空気を下から強制的に吹き込んで炭を燃やし12
50度以上の高温にして鉄を溶かしたり、また酸化鉄から酸素を取り除いて鉄を作り
ます。
 たたら(蹈鞴)は足踏みフイゴ(鞴)のことで映画「もののけ姫」の中で女性の方達が
足でふいごを押して空気を溶鉱炉に入れていたのを覚えていると思います。

5-2.炭の化学的吸着力の利用方法

 その他にも炭の持っている化学的作用として、トイレの匂い、下駄箱の匂い、犬
猫の愛玩物特有の匂い、新築の家に使用されている新建材や合板などから出る化
学物質を吸着する性質を持っていますので、家を新築された方にお祝いとして、全
部屋分の飾り炭を送るのも良い方法と思います。(シックハウス病といい新建材な
どから発生する化学物質がアレルギーの原因となり、たまにはアレルギーで死亡す
ることも有ります。)
 特に新築した家に小さな子供さんがいる家庭には最高の贈り物になります。
 現在では炭の粉を透き込んだ壁紙や天井材なども有ります。
 夏の季節になると、水道水の源水の水質が落ちたり、藻の多く入った川からの取
水も増えて、水道水には殺菌の為に塩素を入れますので、独特の塩素臭がしま
すし、かび臭さや藻の匂いが入ることも有ります。
 日本の水は一般的には安全で人体には影響は無いといわれていますが、信用でき
ず、あまり気持ちのよいものでは有りません。
 そのような匂いや味を直すために水道水に炭を入れますと水道水に含まれる塩素
やかび臭さ、藻の匂いを吸着してくれます。そして炭が持っている大切なミネラル
分が溶け出て、美味しい水に変わります。出きるなら水道水を2分間程度沸騰させま
すと、トリハロメタンは蒸発しますし、塩素も大部分取れますので、その後炭を入
れ、冷却しますと、夏はミネラルウォーターより美味しくなり、家計も助かると思
います。水割りにも最適ですしミネラルも取れます。
 また、お茶やコーヒー、紅茶などに使う水にも、炭を入れて使いますと、美味し
いお茶やコーヒー、紅茶が楽しめます。
 ご飯を炊くときに、炭を入れますと、嫌なにおいを吸着し、美味しいご飯となり
ますが、新米ではほとんど効果が見られませんので、古米となる夏ごろから入れて
みてください。これらは、是非試してほしいものです。
 ひよこが生まれたときにも、炭の粉末を食べさせて、体内に残っている老廃物を
吸着させ、元気な鶏(にわとり)に成長させます。これは人間にも当てはまります。
 
食中毒にかかったときに薬で効かないときに炭の粉末を飲んで毒素の吸着を助け
る働きに使われています。
炭の粉末を入れた、パンやうどん(饂飩)やせんべいなども有ります。
味は特に変わりませんかが口の中は炭で黒くなります。

5-3.吸湿性と防虫効果の利用方法
 海岸近くや湿気の多い地域では、炭の吸湿性を利用して、床下に厚さ10cmほど
の厚みで炭を敷き入れます。これにより湿気を吸着し、湿度の低いときには炭から
水分が発散し、その結果家を長くもたせることも出来ます。また、炭はアルカリ性
のために虫もなかなか寄り付きません。
この性質を利用し、米びつの中に炭を入れ
ることにより、虫の発生を押さえることが出来ます。

5-4.ミネラル分と研磨材の利用方法と白炭の赤外線の放射
 その他の生活面では、炭の粉末を入れた化粧石けんが有り、炭の研磨剤の効果により
皮膚の表面の角質層が取れます。ミネラル分で洗うこにより心の気持ちが良くなります。
 白炭などは外部からエネルギーを貰うとそのエネルギーを変化させそして遠赤外線
を出す性質があります。外部からの近赤外線や電磁気力などを遠赤外線に変える性質
があるそうです。これを使った竹炭の枕があり、首や肩こりにも効くそうです。

5-5.化学的性質の利用方法
 化学的性質では、炭も電池の材料として使うことも出来ます。竹の白炭の電池を
作って発光ダイオードを点灯することも来ます。
 炭も金属の仲間ですので、別な金属の間にイオンになりやすさ、なりにくさによ
って、電気が起こりますが、発生する電圧はイオン化傾向の差によって変わってき
ます。
 実際のマンガン乾電池の中心には炭素電極があり、外側は亜鉛の筒で出来ていま
す。その間には二酸化マンガンなどの電解物質が入っており、二つの金属間を電子が
移動し化学反応することにより、懐中電灯やラジオやCD、MDを動かすことが出来ます。
この中心の電極も炭素そのものです。
 アメリカの有名な発明家エジソンさんは日本の京都の竹を使って、エジソン電球
を完成させました。
竹をフィラメントの型にして、高温度で炭にしました。この竹炭は白炭です。
 そしてガラス容器に入れて、容器の中の空気を抜いて真空にしてから電気を流し
て、フィラメントを点灯しました。真空でなくても、酸素が無ければ電球は点きま
す。
皆さんの家庭にある一般の電球の内部には窒素ガスが入っています。
車の電球には、よう素などのハロゲン化の希ガスが入っている物もあります。
このごろの高級車は放電式の電球を使っているのも有ります。

5-6.その他の利用方法

 炭はアルカリ性としての性質と炭が多くの細胞の集合体の為に小さな部屋は微生
物が繁殖するのに都合の良い部屋となっています。その結果微生物が繁殖し土壌改
良剤としての働きもありますし、炭のアルカリ性は酸性土壌の中和剤として、利用
されています。
 また土壌中に不足しているミネラルの補給にも役立ちます。
石灰でも中和が出来ますが、その場合には土壌の表面が硬くなってしまい、地面に
水の浸透が悪くなります。

5-7.注意事項
 
炭の吸着力にも限度があります。最初は水酸化カリウムによりアルカリ性を示します。
特に大量に入れた場合にはアルカリが強すぎることがあるので注意を要します。
水などに入れた場合は、1週間を目安として取り出し、もち焼きの網の上で焼いて使って
ください。このときは水分が蒸発し、かつ煙が出なくなったら火傷をしないように火バサミ
などを使って酸素が入らないような鉄のお茶の缶などに入れて冷却をしてから使うと一ヶ月
むほど繰り返し使うことができます。一ヶ月たったら、新しいものに、取り替えてください。
取り替えた炭は粉にして花壇に撒いてください、そうすると花が喜びます。
出きるなら卵や貝を焼いてそのカルシュームを加えるのをお忘れなく。
(化学的に吸着された物質は炭においては420℃以上の熱が外部より加わらないと化学的に
結合された物質は離れることが出来ません。足利工業大学荘司教授からの補足説明です。
ですから炭の吸着力が弱くなったらガスコンロの上に餅ち焼き網を敷いて、その上に炭を置き
ガスで真っ赤にして吸着した物質等を熱で取り去ってください。天火などに干しても化学的に
吸着した物質は炭から離れることが出来ません。亡くなりました炭焼の会の名誉会長故岸本定吉
会長さんも言っておりました。)



追加事項
故岸本定吉博士の話では低温炭は塩素の吸着力は高いが高温度で焼くことにより重金属
の吸着力強くなる。と言われました。2002年11月サンレイク草木にて

大森博士の実験の結果は700℃の炭より高温度の炭のほうがアルカリ性が強い。
今年の8月の世界土壌学会(仙台)の発表論文を手に入れて見て下さい。
ISBN 4-9902071-1 Aug.1-5,2004 Sendai,Japan
Proceedings of the 6th International Symposium on Plant-Soil Interractions at Low pH

本校登田先生の実験では全ての炭はP型半導体特性を持つことが解った。
本校平成15年度研究紀要に発表されています。


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